突然だが私は、3日に1回以上は無意識に本屋に寄っている。
その利点を生かし?最近、印象に残っている本を紹介しよう。ちょっと、気合いれて書きすぎたかな・・・(^^;

 今、全国の書店の「ビジネス書」や「フィクション」の分野で急激に売り上げを伸ばしている本がある。
もう、みなさんも目にしたことがあると思うが「チーズはどこへ消えた?」という至極簡単な本で、最近の週間売上は、なんと、2位か1位に入る勢いで売れている。
定価は880円で前書きから解説まで入れて94ページの本である。活字が苦手だという人でも気軽に読めるページ数でもある。

 原題は「Who Moved My Cheese ?」で、「私のチーズの在処を変えたのは誰」といった意味だ。
筆者によれば、「チーズ」には「私たちが人生で求めるもの、つまり、仕事、家族や恋人、お金、大きな家、自由、健康、人に認められること、心の平安、さらにはジョギングやゴルフ」を象徴させているらしい・・・
しかし、最近の傾向として、売れる(人気)ビジネス本の嗜好も本当に変わってきたものだ。
「経済ってそういうことだったの会議」や「金持ち父さん、貧乏父さん」などもそうだが、実にわかりやすい本が売れているのである。
「スピードの経済」や「グリーンスパンの魔術」など小難しいビジネス書をよく読んでいる人達には、「あれ?これまでのビジネス本とはまったく違うな。」と思わせる本なのだ。

 更に、この本は次の二つの点で興味深い。

 第一点は、この本はアメリカでは1998年の秋に出版されて1999年度に「全米ビジネス書ベストセラー第1位」になった本である。
だが、日本では2000年、つまり去年の秋から売れ始めて、今年はビジネス書のナンバーワンになる可能性がかなり高いこと。(もう1位といってもいい)
 第二点は、アメリカではこの本をIBM、アップル、GM、アメリカ陸・海・空軍、チェース・マンハッタン、フォードなど名だたる大企業が「研修テキスト」に使ったこともあって「トップダウン」の売れ方をした面があるのに、日本ではまず学生やビジネスマンやOLが買い、その中で売れ行きが伸びてきているという「ボトムアップ」型だという点だ。
著者は「チーズ」にいろいろな思いを込めているらしいが、日本でもアメリカでも「チーズ」とは企業にとっては「収益」、働く人間にとっては「仕事」に読める。
産業構造の激しい変化の中で、実際にこの二つはある場所では消え、しかしなくなったわけではなくて別の場所に出現しているからだ。
日本でもアメリカでも経済の規模は増大しているのだから、「チーズ」が消えていることはない。

 では、誰が(チーズを)動かしたのか?それはテクノロジーの進歩、産業構造の変化、そしてグローバライゼーションなどほか様々だが、問題はそれにどう対応するかである。
ある場所にずっとあると思われていた「チーズ」(収益や仕事)が突然なくなったりするケースが増えている。実際の話だ。(みなさんもこんな経験があると思う)
場合によっては会社がなくなったり、突然ライバル会社の競争セクションが一緒になったりする等々。各社の部門はかつての競争の姿から、「統合」へと向かっている。中で働いている人は大変だろう。

 この「チーズはどこへ消えた?」の主人公は二匹のネズミ(スニッフとスカリー)とネズミと同じくらいの大きさの二人の小さな人間(ヘムとホー)。
一つのチーズを食べ終えた時に、ちょっとした対応の差が次のチーズを探せるかどうかにつながるとこの物語は説く。
この本がアメリカでも90年代の後半になって売れたというのは、いろんな意味でおもしろい。
多分、アメリカ(企業や仕事をする人)も大いに悩んでいたのでしょう。でなければこの本は売れてないだろう。
そして日本人(企業)は二年遅れで悩んでいる。収益はどこに消えた、自分がしてきた仕事はどうしてなくなったと。
日本人や日本企業にはアメリカより多少、変化を逡巡する「ヘム」が多いのかもしれない。
別の場所にちゃんとあるのに。未充足求人数は日本でも増えるばかりだ。

 しかし、日本の国民がこの本を好んで読み始めたと言うことは、いよいよ自分の今までの「チーズ」が危なくなったことを多くの人が感じ始めたと言うことである。
そしてこの本を読んで感じるのは、「次のチーズはある」ということだ。多分日本では、わかっていても動けない人が多いだろうが、それでも事態は着実に変化してくる、と思った方が良い。
実は「チーズはどこへ消えた?」という本が売れれば売れるほど、日本経済には明るい材料となるのだ。
日本はいままで政府の政策も、「国民の皆さん、そのままでいてください。私たちが何とかしますから」というのがメイン・メッセージだった。国民や企業が変わらなければ、何も出来ないことは薄々判っていたのにである。
国民に「変わりなさい。でないと大変なことになりますよ」という人は嫌われてきた。政治家もそうだった。
しかし、この本は「そうではなく、新しいチーズは自分で動かなければ見つからない」と説いている。自助である。

だから今回の私のコラムの締めはこの言葉にしよう。
 『新しい“チーズ”を探そう!』

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