無情について

歳というものはとりたくないもので、いつまでも若者でいたい、と思うのが人の常。

ところが悲しい哉、若者はそうは思わない。

こういうことを考えることがオッサンの証明であり、すなわち私もオッサンなのである。



オッサンと若者の境目について考えてみる。

若者がオッサンになるうえで、ある日いきなりオッサンになっているなんてことはない。

各々の体の中で、あたかも癌細胞のように静かに少しずつオッサンは成長しているのである。

大概の場合は、発見されたとき自覚症状が出てしまったときは、もう手遅れなのだ。

ハッと気づいたときには、オッサンの完全体へと成長を遂げている。

そして誰もが「なんじゃ、こりゃー!」と叫ぶのである。



中には早期発見で「あれ?俺、オッサンになりかけている?」と自覚し、オッサンになりたくないと悪あがきをする人がいたりする。
しかしながらオッサン道というのはエスカレーターのような逆走すれば助かるという生易しいものではない。

ブラックホール。

一度その流れに乗ってしまえば、いくら走ろうがもがこうがその中にシュイーン!と吸い込まれてしまうブラックホールのようなものなのである。

従って一度発覚したが最後。

一気呵成に完全体のオッサンへと変貌と遂げてしまう。

そうして完全体へと変貌を遂げたオッサンは、座るときや温泉に入るときに「っあ゛ぁぁ〜」や「っうっふぇ〜」などという意味不明な奇声を発するようになるのである。





さて、これは例によって某大衆浴場での話。

折りしもこの日は週末ということで、露天風呂はオッサンで満たされており、カエルの大合唱のごとく「っあ゛ぁぁ〜」といった声がどこからともなく聞こえてくる魔界と化していた。

その湯船に浸かりながらボーっとしていると、小さい子供がお父さんの後ろをトトトトッと走っているのが目に入った。

(走ると危ないよ〜)と思いきや、案の定子供がツルッと滑って尻もちをついた。


こりゃ泣くなぁ・・・と思っていたのだが、子供はジッと堪えて泣きもしない。


おぉ大した子供だと思って見ていると、あろうことかさっきまで湯船に浸かっていたラムちゃんのオヤジみたいなオッサンが子供の後ろからニッコリと「大丈夫かい?」と声をかけた。

・・・

ナマハゲが部屋に入ってきたときの、子供の映像を見たことがあるであろうか?

子供はナマハゲに恐怖し、平和な家は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと化す。


即ち、鬼のような大男に面と向かって声をかけられた子供が、骨が2・3本折れてるんやないかというくらいの感じで泣き始めたのも無理はない話なのである。

慌てふためくラムちゃんのオヤジを見ながら、顔を手で覆いかぶりを振った。



あぁ・・・無情。




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